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「あるものを活かす」は正解だった。

わたしは「あるものを活かす」という行為が好きです。


好きというか、背伸びせずに身の丈から始めればいい、というやり方が性に合っているんだと感じます。


それに、「まだ足りない」「まだこれが必要」と考えると、焦りも出てくるし、「こんな調子で本当にできるのかな?」「できるとしても、いったい何年後になることか……」なんて、不安を覚えたりしないですか?


その点、「あるものから始める」という行為は、「いまあるもので充分」「必要なものは足りている」と安心感を与えてくれるから、前向きになれるんだと思うんですね。


これ、何度かこのブログでも書いているけれど、「何者にもならなくていい、今の自分のままで、できることをすればいい」という考え方です。


ここ最近本を読んでいて、そんな考え方が「やっぱり正しかったんだ!」と思えるような場面に出くわすことがいくつか重なったので、今日は改めてそのことについて書いてみようと思います。



あるものを活かすのは、近道


まずは、木下斉さんというまちづくりのプロが書いた『まちづくり幻想』(SB新書)という本から。


木下さんは、「お金がない」と言う人ほど、そもそも「お金がかかる」事業から始めようとしているところに問題がある、として、


「お金がないならないなりのスケールを設計し、誰よりも早急に投資回収できる術を考えればいいだけです」


「何より自分の手持ちでできることで挑戦を始め、それが小さくとも回れば、資金はあとから知り合いや銀行が投融資してくれるようになります。何もしていない人が『お金があればなー』なんていっていたら怖くて投資も融資もできません」


と言います。


お金があれば遠回りせず、欲しいものをすぐに作れるのかも。


でも、お金を作り出すのも大仕事ですよね。


だったら、あるものでお金をかけずに始めることが、結局は近道だったりするということ。


これ、かつて自分が「カフェづくり」という目標に向かって、資格も資金も物件も、本当に何もないところからスタートした頃に重なるんです。


そのとき、私がしたのも「今あるものから始める」ということ。


何もないながら、こんなカフェを作りたいという「夢」だけはあったので、その夢を描いて周りに伝えました。


仲間になってもらいたくて声をかけたのも、価値観が近いと感じたママ友だったり、NPO活動の先輩だったり、嫁どうしという関係の親戚だったり、すでに自分の周りにいた人たちばかり。


そして、仲間になってくれた人のガレージを借りて、イイトコマルシェを始めたのでした。


自分や仲間がやれることから、小さく小さく始めたのが、リスクも少なくて済むし、本当によかったと今も思います。



あるものを活かすのは、強み


次は、山口周さんというコンサルタントが書いた『知的戦闘力を高める独学の技法』(ダイヤモンド社)です。


書籍や映画、テレビや街にあふれた広告や看板など、周囲のありとあらゆるものから独学で知識をインプットしていく際に、どんなジャンルを深めていき、自分の武器とするのか、という指針で、山口さんは「持っているものに着目する」大切さを説きます。


「ここは負けない」というユニークな立ち位置をつかむには、「 持っているものに着目すること」に尽きる、と言います。


「多くの人は『自分が持っているもの』を活かそうとせず、『自分が欲しいもの』を追求してしまう」


そうして、自分にはないものを得ようとして、なんとか自分のものにできたとしても、それはせいぜい「人並み」でしかなく、その人の飛び抜けた強みやユニークさにはならない、と。


「もっとも大事なのは、『自分がいますでに持っているもの』を、どのようにして活用するかを考えることです」


今すでにあるもの、それこそがすでにユニークで、人と差別化できる武器になると言います。


どんな人でも、今この時まで、ただ無駄に過ごしてきたわけではないこと。


私のように、「自分は何ができるのか、何に向いているのか」探しながら、遠回りや寄り道をしながら生きていた人間でも、それは無駄ではなかったと思っていいんだ。


なんだか勇気をもらえるじゃありませんか?


あるものを活かすのは、共感を呼ぶ


ここで私の頭に浮かんだのが、これよりずっと前に読んだ本と、尊敬する人の経営姿勢です。


尊敬する人というのは、スープストックトーキョーを創業したスマイルズの遠山正道さん。


そして本というのは、スマイルズのクリエイティブディレクター野崎亙さんの書いた『自分が欲しいものだけ創る!』(日経BP)です。


遠山さんも野崎さんも、スマイルズの仕事の基本にあるのは、他の誰でもない、「自分が欲しいものをつくる」こと。


それ、売れるの?とか、誰が買うの?ではなく、私はこんなのが欲しい。


マーケティングありきで、人が欲しいものをつくるのではなくて、自分が欲しいものをつくるということ。


で、作ったものを提示して、「私はこういうものがいいと思うんだけど、あなたはどう思う?」って、世の中に投げかけることだといいます。


「つくりたい奴がつくったものは、ちゃんとわかるお客さんがいる」から。


これも、子育てを始めたばかりの頃の自分が切実に欲していた場所、子育てカフェを作ろうって活動につながっています。



あるものを活かすのは、正しい


そして、最後に。


あるものを活かすのは、ワクワクします。


「必要だけど足りないもの」からスタートしようとすると、それが足りるまで始めることができません。


始めたいのに、「待った!」をかけられているような、モヤモヤした感じ。


マイナスからのスタート、とでもいうのでしょうか。


マイナス(足りないもの)からスタートするとすれば、まずはゼロ(スタート地点)まで持っていかないといけない。


マイナス方向からプラスへ持っていくのも一苦労。


その点、「あるもの」から始めれば、すでにスタート地点から一歩踏み出せるわけです。


物件がないなら、屋台で始める、知り合いの空き地や駐車場を貸してもらう、お店の定休日に店内を使わせてもらう……などなど、あるもの探しをすればすぐ始められます。


とりあえず動き出してしまえば、必要なものは後からついてくるさ、みたいな心持ちで。


こうして目標に向かってもう進み始めてるんだって思うと、ほら、なんだかワクワクしませんか?


振り返ってみると、私は、いまあるものから、できることから始めるしかなかった、ということでもありますが、「そうするしかなかった」ことが、実はひとつの正解だったんじゃない?というお話でした。


そう、私のように、30代は子育てに必死で、気づけば40もとうに過ぎて……なんて人は、マイナスをゼロまで埋めている暇はないのです(笑)。


世の中が、誰かの作りたいもの、その人の個性を活かして作られたもので溢れていたら素敵じゃないかなぁ。


で、どこかの誰かが「あ!それ私の欲しかったものだ!」なんて反応してくれて。


「子育てカフェ」を作りたいと、「ありもの」から始めていろいろやってきたイイトコの通ってきた道が、誰かの「やりたい!」の参考になれば幸いです。

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